はじめに
先月発生したエア・インディア機の墜落事故を巡り、調査当局は事故原因の解明に向けてパイロットの行動に焦点を当てています。米当局者らの初期評価に詳しい関係者によると、現時点では、事故機であるボーイングの**「787ドリームライナー」には機体の問題はなかった**とみられています。
機体に問題はなかったなら、いったい…。
予備調査が示唆する「燃料供給スイッチ」の異変
関係者らが明らかにした予備的な調査結果では、墜落の直前、2基のエンジンへの燃料供給を制御するスイッチが切られ、離陸直後に推力が失われたことが示唆されています。このスイッチは通常、パイロットがエンジンの始動、停止、または緊急時のリセットに使用するもので、飛行中はオンになっているのが一般的です。
しかし、なぜこのスイッチが切られていたのか、その背景は不明のままです。関係者は、これが意図的なものだったのか、偶発的なものだったのか、あるいはパイロットがスイッチを入れ直そうとしていたのかについても現時点では分かっていないと述べています。このスイッチが切られていたとすると、機体が学生寮に墜落する直前に非常用電源発電機(ラムエア・タービン、RAT)が作動したとみられることについて説明がつきます。

経験豊富なパイロットと異例の事態
事故機のパイロットを務めていたスミート・サバルワル機長は、大型のワイドボディー機の操縦に関して1万時間以上の飛行経験を持ち、副機長のクライブ・クンダー氏も3400時間以上の経験がありました。両名ともに豊富な経験を持つベテランであるにもかかわらず、なぜこのような事態が起きたのか、疑問が深まります。
インドの民間航空当局者のムルリドハル・モホル氏は6月下旬、NDTVニュースに対し、「両方のエンジンが同時に停止するのは非常に珍しい事例で、これまでに起きたことがない」と説明しており、今回の事故がいかに異例の事態であったかを強調しています。
B787のパイロットである私も、両方のエンジンが同時に停止するというのは考えにくいことだと思います。
調査の行方と広がる影響
調査を主導するインドの航空機事故調査局は、現地時間の本日(11日)にも予備的な報告書を発表する見通しです。
今回の墜落事故の要因特定は、多くの関係者に影響を及ぼします。国内最古の航空会社であるエア・インディアは、国有化から数十年を経て事業の立て直しに取り組んでいる最中でした。また、今回の事故はボーイングのドリームライナーで初めての死亡事故であり、同社が安全性と品質に関する一連の問題から立ち直ろうとしているタイミングで発生したことは、今後のボーイング社の動向にも注目が集まることを意味します。
現時点では、米連邦航空局(FAA)や航空機・エンジンメーカーは、機体に関する潜在的な問題に対処するための通知や安全性に関する指示を出していません。通常、調査で設計、整備、運航手順の不備が示された場合にこれらの措置が取られるため、今後の調査結果が待たれます。
全B787パイロットがどうしておのような事故に至ったのかを知りたいと思っています。