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中国、ボーイング機の納入を停止—米中貿易摩擦の影響が航空業界に波及


はじめに

何が起こったのか?

中国政府は、国内の航空会社に米ボーイング社の航空機の納入を停止するよう指示しました。この決定は、米国が中国製品に145%の関税を課したことに対する報復措置とみられています。さらに、中国政府は航空会社に対し、ボーイング機だけでなく、米国製の航空機部品や関連機器の購入も停止するよう求めています。

これは、ボーイング社にとってかなりの影響が出ると思います。

なぜこれは重要なのか?

ボーイングは長年にわたり、中国市場を主要な成長市場と位置づけてきました。過去には、ボーイングの年間納入機の25%が中国向けだったこともあり、中国からの注文は同社の収益に大きな影響を与えていました。しかし近年、貿易摩擦の影響やボーイング自身の問題(737 MAXの墜落事故や品質管理の課題)により、中国からの新規受注は減少傾向にあります。

今回の決定により、ボーイングの中国向け未納機130機(約2%の受注残)が影響を受ける可能性があり、さらに今後の大型受注の見通しも厳しくなるでしょう。

当分の間はエアバスがメインになるのでは…。しかしエアバスも納入可奇数数に限界があるので、その穴を何で埋めるのかが大切ですね。

影響は?

ボーイング:

  • 株価が下落し、中国市場での将来が不透明に
  • 在庫として抱える中国向けの航空機を他市場へ転用する必要がある
  • 既存の納入予定機(2025年~2027年に予定されていた179機)の受領が不確実

エアバス:

  • ボーイングの代わりに中国市場でのシェア拡大が期待される
  • すでに中国航空会社から332機の注文を受けており、納入が進行中
  • 中国に最終組立工場を持っており、より柔軟に対応可能

COMAC(中国の航空機メーカー):

  • 自国の航空会社がボーイング機を購入できなくなることで、国内メーカーの成長を促進
  • 主力機「C919」の生産拡大計画(2028年までに年間150機)を後押し
  • ただし、一部の部品を西側諸国に依存しているため、供給面の課題も

背景は?

米中貿易摩擦は2018年に始まり、トランプ政権時代から激化しました。米国は高率の関税を課し、中国も報復措置を繰り返し、特に航空機産業は政治的な影響を受けやすい分野として知られています。

過去にも、中国は貿易摩擦が激しくなった際にボーイングの注文を減らし、エアバスへの発注を増やしたことがあります。また、航空機産業に関連する貿易制限として、中国はレアアース(重要な航空機部品の製造に使われる希少金属)の輸出制限を実施したこともあります。

今回の米中貿易戦争は過去に例を見ないほどの高税率の戦いなのでこの影響は計り知れないものになるのでは…

今後の可能性は?

いくつかの異なるシナリオが考えられます。

  1. 長期的な禁輸が続く場合:
    • ボーイングは中国市場でのシェアを大幅に喪失
    • エアバスが注文を増やし、中国市場で独占的な立場を強化
    • COMACの国内市場での成長が加速
  2. 段階的な緩和:
    • 貿易交渉により禁輸措置が緩和され、ボーイングが市場に再参入
    • ただし、エアバスとCOMACとの競争が激化し、ボーイングの市場回復は限定的
  3. COMACの急成長:
    • 中国政府の支援を受け、COMACの生産能力が拡大
    • ボーイングが中国市場へのアクセスをさらに制限される
    • エアバスとCOMACのシェア拡大が続く

中国における航空事業の情勢が変わってきそうですね。

まとめ

中国政府の決定は、航空業界に大きな影響を及ぼす可能性があります。

  • ボーイングは中国市場での将来が不透明になり、収益面での厳しい状況に直面
  • エアバスはボーイングの不在を利用し、中国市場でさらに強固な地位を築く可能性
  • COMACは政府支援を追い風にし、国産機の需要増加を活かして成長を加速する可能性

米中貿易摩擦が続く限り、航空業界の勢力図は変化を続けるでしょう。各企業がどのように対応するのか、今後の動きに注目です。